パリパリふわっ 紅しょうが香…
クロレラレシピ集
突然ですが、お米好きですか?
日本人にとって、食べ物の原点って言えばやっぱりお米ですよね。クロレラくらぶ「旅するFood記」は、日本各地を旅してその地域に根ざした美味しいもの(food)と文化(風土)を探るコンテンツ。手始めに京都のお稲荷さんで、お米にまつわるFood記をしてきました。
まずは世界最大の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」で、2014年最も人気の高い日本の観光地に選ばれた伏見稲荷大社へ。普通なら有名な「おもかる石」や「千本鳥居」を見るところですが、今回のお目当ては本殿の神様。ここに祀られているのは稲(お米)の神様、その名も「ウカノミタマ(宇迦之御魂神もしくは倉稲魂)」というんです。
お米は炊けばご飯に、発酵させれば酒や酢に、蒸せば餅に、焼けばせんべいやあられに、味噌や醤油も米からできた麹を使って作ります。
武家社会の年貢や給金として国そのものを支えてきたお米は、神道でもとても重要な位置を占めているんです。例えばお正月に飾るお餅と、しめ縄。これは共に稲からできていますよね。おめでたい時にお餅をつくのも、お米やお餅が神様の食べ物だからなんです。
今ではその枠を飛び越え商売繁盛や学業成就にもご利益があるといわれる稲荷神ですが、ここ伏見稲荷大社の境内には、いにしえのお米を大切にする人々の信仰の跡が残っていますよ。
本殿で旅するFood記の成功を祈願してから、ちょっと境内を巡ってみましょう。
境内の片隅にある神田。神様にお供えするお米はこの田んぼで作られています。
と、お勉強的なお話はここまでにして、伏見稲荷の参道へ。
大鳥居の脇の参道には、鳥居やお狐様の置物を売る神具店や名物の伏見人形を売るお店のほか、飲食店も軒を連ねています。屋台の美味しそうな食べ物をぐっと我慢して、さぁ、お目当ての店へ。
香ばしい匂いを立てて焼かれているのは、ウズラやスズメなんですって。これは、「実った稲を食べてしまう農業の“天敵スズメ”を食べてしまえ!」という「鳥追い」の伝統から生まれた食文化。
伏見の農民…なかなかにカゲキです。
残念ながらスズメの猟は11月末なので売り切れ。それでも店内でうずらをいただくことに。
ここでもやっぱりカゲキな体験。手前の小さな塊…これ、鳥の頭ですよね…。
おそるおそる食べてみると、意外と普通に丸ごと食べられます。ぎゅっと繊維の詰まった肉は、鶏肉とはまた違ったちょっと野生的な味わい。
鼻に抜ける山椒と、少しだけ甘味を足された醤油ダレが食欲をそそります。「頭なんて食べられない…」という方もご安心を。お店では骨抜きや頭なしの注文もお願いできますよ!
そう、稲荷寿司。一説では、稲荷寿司は米俵の形を表しているのだとか。
確かに米俵よりはこちらのほうが、神様にもお供えしやすいですね。稲の穂で作った藁で包んだ米俵、そしてそれを模して米を詰め、お狐様の好物油揚げで包んで供えるなんて、お米を大事にする日本人の心が現れています。
他にも、狐のお面を模したお煎餅やあられの専門店、お餅を使ったスイーツなど、稲荷大社の参道には「これでもか」というほどお米を使った食べ物がいっぱいです。
せっかく伏見稲荷まで来たんだから、お米の他にも食べたい!
そんな時に立ち寄りたいのが、参道を出て北へ200mほどにある「こにし」。ここは創業50年を超える、知る人ぞ知る伝統的な伏見稲荷の立ち寄りスポットです。お店のショーケースを見るとそこには、目を奪われる黄金色の物体が!
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オススメは塩水に一晩つけてから一時間、じっくり焼き上げた焼き芋に、飴がよく絡んだ大学芋。
どちらも、ホクホクなんて言葉では表せません。ねっとりと口の中でとろけますよ。
お米でできる、神社と深く関わってくるものといえば、お酒。伏見が京都の酒処となったのは、伏見稲荷のお米を大事にする文化や、お酒(お神酒)を捧げる風習の他に、もうひとつお酒にも食にも欠かせないものがあったのです。
それは水。
伏見稲荷大社をちょっと離れて、京阪電車で約10分。たどり着いたのは伏見桃山駅。駅から歩くこと5分でたどり着くのが、「御香宮神社」です。社伝によれば数千年前、ここに芳しい香りのする水が湧き出た事からその名のついたとされる「御香水」が、今も残っています。
こんこんと湧き出る御香水。地域の人が飲み水として持ち帰る事も多いそう。カルシウムやカリウムをバランスよく含んだミネラルの高い中硬水で、美容にも良いそうですよ。
そもそも伏見は、かつては「伏水」とも言われるほど水に恵まれた街。この地に農業が栄え、そこに暮らしと街が生まれ、それを支える信仰が誕生したのも自然の流れなのかもしれませんね。
伏見桃山駅近辺には、見学や試飲をさせてくれる酒蔵も多く、駅からすぐの伏見追手筋商店街では、地元伏見のお酒をお土産として買うこともできますよ。
特に近年では、伏見の酒造りも変化を見せており、女性をターゲットにした飲みやすいものやデザインにこだわったお酒も登場しています。
ちなみにウズラを食べたお店には京都府の国勢調査PRキャラクター「いなり、こんこん、恋いろは。」をデザインした日本酒がありました。
今回おすすめするのは、女性杜氏の作る「招徳酒造」のこのお酒。春夏秋冬のデザインボトルに加えて、取材時には干支のボトルも登場していました。
キレの良い味わいで、和食との相性もぴったり。爽やかな甘みでゆったり酔えそうな日本酒です。
最後に訪れたのは、近鉄伏見駅すぐの自然食「紬 tsumugi」さん。京都伏見を中心とした契約農家さんから仕入れる野菜と、店主の故郷の綾部市で採れた豆、減農薬特別栽培のお米を使ったおばんざいが人気です。
手作りの器や手書きのレシピが目を引く落ち着いた雰囲気の中、発芽玄米や、大根の皮をつかった炒め物など、食材を余すところなく使った「一物全体食」の日替わりランチメニューをいただきます。
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「一物全体食」や「自然食」というと、体に良さそうなのですがなにやら難しい印象もあります。しかし、カウンターの中の店主さんは、気さくな感じの表情。
「おいしいもの食べなきゃ、楽しくないし健康にもなれないよ」。
なるほど。おいしいもの、健康に良いもの、店主さんが本当に好きなものを選んだのが、このご飯なんですね。菜食主義ではなく、ここではお肉もお魚も、揚げ物もメニューに加わります。店主さんは、病院と連携した食事づくりやお料理教室も随時開催しているそう。
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最後に玄米と紫芋をつかった沖縄の発酵食品「ミキ」を使ったパウンドケーキをいただきました。はちみつを効かせた日向夏のママレードと、みかんの酵母原液に浸していただきます。
伝統と自然だけでなく、食べる喜びも追い求めて、進化し続けるおばんざいがここにありました。
tsumugi 紬(つむぎ)
住所:京都市伏見区深草柴田屋敷町23-86
京阪墨染駅徒歩10分 近鉄伏見駅徒歩5分
電話:075-641-3045
定休:火曜(木・金・土・日はランチタイムに加えディナータイムも営業)
地域の伝統食と、今に生きる食文化を探す「旅するFood記」第一回。日本人の主食とお米の信仰、それから街に生きる人との出会いのある旅となりました。
食の欧米化やダイエットなどで、近年ちょっと元気のない日本のお米ですが、やはり今でもその私たちの生活に深く根ざしています。伏見を旅するときは、観光スポットと共に生活を支えるお米・ご飯の大切さを感じてみてください。
文責:つむぐarticles 鷲巣謙介
編集:食品栄養科学博士 フジシマ