知らないだけだった。文学と味覚、大津市の旅!

2015.12.22

皆さんは滋賀県大津市にどんな印象を持っていますか?

滋賀県の県庁所在地、琵琶湖、なんて思いつくかもしれません。でも、なんだかちょっとイメージがわかない方が多いのではないでしょうか。そこで、旅するFood記第2回は、意外と知られていない京都市のお隣、大津市へ!

そこは、古典文学と不思議な地元グルメに出会える街でした。

源氏物語が生まれた場所?? 石山寺

ラッピング電車で有名な京阪電鉄の浜大津駅から電車に揺られて15分、終点の石山駅へ向かいます。2両編成の可愛らしい電車を降りると、瀬田川の広がるのどかな風景が広がります。

駅名にもなっている「石山寺」はここから徒歩で約10分。

実は世界最古の小説「源氏物語」が生まれるきっかけになったお寺として有名です。
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そして、今もお寺の本堂の脇には紫式部が源氏物語の構想を得たと伝わる「源氏の間」。平安時代の寛弘元年、村上天皇の10番目の皇女、選子内親王から「今まで読んだことのない珍しい物語を読ませてよ!」と命じられた紫式部は、新しい物語を書くために石山寺にこもり、執筆祈願したそう。

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今も残る源氏の間。現代ではロボットの紫式部が解説してくれますよ!

 

祈願のおかげか、紫式部の実力か、いや、その両方か?

十五夜の月が琵琶湖に映えるその風景が、紫式部に新しい物語の着想を与えたようです。

なかなか素敵な“逸話”ですが、なんだか締め切りと編集者に追われ、ホテルにカンヅメになって空を見上げる人気作家さんの悲哀が感じられるのは私だけでしょうか…。

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とはいえ、石山寺で生まれたとされる源氏物語は1000年を超える今もなお大ヒット作品に。ギネスにも登録され世界各国から賞賛を受けています。

現代でも多くのファンをひきつけ、海外からの源氏ファンもこの石山寺に訪れるといいます。お寺の境内のあちこちでは、紫式部や源氏物語にちなんだ数々の史跡やグッズを見ることができますよ。

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紫式部・供養塔

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石山寺絵馬

 

琵琶湖&瀬田川の育む滋味に出会う

石山寺の門前には、幾つかのお土産屋さんが並んでいます。

お店の前を歩いていると、何やらとても良い匂いが。石山寺の前を流れる瀬田川は、琵琶湖から流れる唯一の河川。この川で捕れる魚や名物瀬田しじみを売るお店のようです。中を覗いてみると、しじみの炊き込み御飯や琵琶湖名物の鮒鮨を使ったパイが人気。残念ながら、鮒鮨パイは売り切れ。

普段は川魚を食べる機会は少ないのですが、思い切って鮒鮨を購入してみました。鮒鮨は濃厚なブルーチーズのようで、好きな人はハマルかもしれません。

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漫画『ちはやふる』の舞台!近江神宮へ

石山寺を後にして、再び京阪電車に揺られること30分。今度は「近江神宮前駅」へ。

駅から徒歩10分ほどにある神社は年に一度、お正月にかるたの日本一を決める名人戦&クイーン戦が行われることから、「かるたの聖地」と呼ばれています。

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2016年にはかるたを題材にした人気漫画「ちはやふる」の映画化も決定。

神社内にも、漫画や映画とタイアップしたグッズが数多く取り揃えられていますよ。

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ちはやふるおみくじ

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百人一首せんべい

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『かるた』に恋をした。

 

そもそも近江神宮がかるたとゆかりが深い理由は、この神社が百人一首の巻頭を飾る、第38代天智天皇を祀っているからなんです。

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絵馬の図案もかるた取り。裏にはかるたに青春をかける学生さんの真摯な願いが書かれていました。

古典文学が好きな方はもちろん、漫画や映画で興味を持った方も、ぜひ一度本当のかるた取りを見てみては? 真剣におこなわれるかるた取りは、目に見えないほどのスピードでの戦いになります。知らず知らず息を飲む熱い戦いをぜひみなさん自身の目でお確かめください!

ちなみに来年の名人位・クイーン位決定戦は1月9日ですよ!

・近江神宮ホームページ
かるた大会のスケジュールもこちらから!
http://oumijingu.org/


街歩きで出会った、風土の味覚

近江神宮を出た後は、京阪浜大津駅を経てJR大津駅までふらりと徒歩で探検です。

そして、見つけたのが、この地の伝統や歴史を感じる食べ物&飲み物の数々。

『ちからもち』の三井寺餅

京阪浜大津駅すぐのお店で発見したのは、優しい甘さのスイーツ。ふわふわの餅に、香ばしい青大豆のきな粉とお砂糖をまぶした「三井寺餅」。

伝説から生まれた優しくて素朴な餅菓子
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このお菓子は、三井寺の鐘を武蔵坊弁慶が比叡山まで引きずって運んだという逸話から生まれた近江銘菓。

200年以上にわたって地元で愛され続ける伝統のお菓子で、大切な人が来た時や親戚などの集まりの際には、数百本単位で買い求めるファンもいるそうです。

三井寺力餅本家
京阪電鉄石坂線浜大津駅より徒歩1分
住所:滋賀県 大津市 浜大津 2-1-30
電話:077-524-2689

大発見!350年の老舗酒造

そして、JR大津駅への途中でふらりと寄り道した商店街。何気なく目に留まったのは古い造りの酒屋の「平井商店」さんです。入ってみると、フワッとお酒の良い香りが漂います。

取材に行った12月はちょうど新酒の時期。

お店の方にお話を聞いてびっくり。ここは350年余も続く老舗酒造で、店舗の奥には酒蔵があり、当代で17代目・18代目(18代目は珍しい女性杜氏さん!)となる杜氏がお酒を仕込んでいるということ。

早速、今年の新酒とこれまた大津の名物である「大津絵」がコミカルに描かれたカップ酒とビンを購入です。

非常にやさしい、淡旨な良いお酒と出会うことができました。お店のカウンターをお借りしてお酒の記念撮影です。

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平井商店
京阪電鉄石坂線浜大津駅より徒歩約5分
住所:滋賀県大津市中央1丁目2-33
電話:077-522-1277

頑張れ!老舗佃煮店

平井酒造からほど近く、JR大津駅のすぐ側で見つけたのは佃煮屋の大津屋さん。大津港で毎日仕入れる湖の幸を使った佃煮などを販売しています。アサリやしじみだけでなく、ウグイ・ハス・イサザ・モロコ・氷魚(鮎の稚魚)など私たちになじみの薄いお魚の佃煮がいっぱい。

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近年ではブラックバスなどの影響や食文化の変化で、漁獲量が減ってきているという琵琶湖の魚。
それでも、こうして毎日飴色の佃煮を店頭に並べるお店があると、なんだかホッとします。佃煮はひとパック150円から。リーズナブルな地元の珍味です。

大津屋
JR大津駅から徒歩約5分
住所:滋賀県大津市末広町2-8
電話:077-524-5550


知らないだけだった!地域の魅力を再発見する旅

名だたる観光地というわけではなく、こうして旅をしてみるまではそこにどんな魅力があるのか、計り知られなかった滋賀県大津市。

知らないだけで、人の生活があり歴史が息づくこの町で出会えた文化と味覚がありました。京都に来たらぜひとも足を延ばしてほしい、大津市。オススメです。

風土記の戦利品(別名:ほろ酔いセット)
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次回も、風土の魅力、フードの味わいを再発見していきたいと思います。どうぞ、お楽しみに!

文責:つむぐarticles 鷲巣謙介
編集:食品栄養科学博士 フジシマ