関西に春を告げる、奈良東大寺「お水取り」

2016.3.28

二十四節気のひとつ啓蟄(けいちつ)が過ぎ、そろそろ春めいてくる3月のはじめ。奈良県にある世界遺産、東大寺では1260年以上にわたって続けられている法会(ほうえ)が行われます。その名は「修二会(しゅにえ)」。またの名を「お水取り」。

今回は「これが終われば、関西に春が来る」と呼ばれる伝統行事と奈良のFoodを巡ります。

1260年以上、一度も欠かさず継続されている行事

1
華厳宗(けごんしゅう)大本山東大寺の二月堂で行われる「修二会(しゅにえ)」。関西に住んでいる方であれば二月堂の回廊で明々と灯された松明(たいまつ)の映像を、ニュースで見たことがあるのでは?この法会(ほうえ)は日頃の過ちを懺悔(ざんげ)し平和を祈る儀式で、旧暦二月に修行を行うことから「修二会」と呼ばれるようになりました。また、「お水取り」は修二会のクライマックスともいえる儀式で、深夜に観音様に捧げるお水を汲み上げる行を指します。

この修二会のすごいところはその伝統。西暦752年に始まって以来、今年まで1265年間、一度も絶えることなく続けられてきたことから「不退の行法(ふたいのぎょうほう)」と呼び習わされることも。先の「お水取り」で汲み上げた水は、瓶に継ぎ足され続けているそう。つまり瓶の中には修二会の始まった頃の年代の水も含まれているのです!

えっ?あの松明(たいまつ)は、メインの行事じゃないの!?

2
ダイナミックな松明の役割は足元灯!?

修二会のシンボルといえば、二月堂に灯る「お松明」。これを行事のメインだと思われる方もいますが、実は間違いなんです。この松明は、法要を行うために選ばれた僧侶「練行衆(れんぎょうしゅう)」と呼ばれる僧侶が、二月堂の回廊を歩く際に足元を照らすもので、いわば足元灯。しかも昔はもっと小さな規模の灯(ともしび)であったといいます。

とはいえ、壮大に火の粉を振りまく二月堂の松明も見ごたえたっぷり。普段仏教行事に触れることの少ない私達も気軽に見ることができますし、目の当たりにすれば思わず見とれ、敬虔な気持ちになります。実はこのお松明、過去に火が燃え移り本堂が全焼した歴史があるのですが、それでもこの法要を続けることを選んだということはそれだけの祈りや意味が込められているものなのだと感じます。

お松明には多くの観光客が訪れますが、それ以外の行にも熱烈なファンは多いんです。特に地域の方や「修二会を本格的に堪能したい」という方は、毎年深夜の法要を心待ちにしています。「凛と静まった闇の中で、厳かな声明が響く様子は格別」という、地元の方の声を聞きました。日常から切り離されたその空間は、まさに懺悔と祈りの場にふさわしいといえますね。

修二会は、2週間毎日行われますが、最も混雑するのはお水取りの儀式が行われる12日のお松明の時間。行事の荘厳な雰囲気を十分に味わいたいのであれば、それ以前に二月堂を訪れることがオススメです。

厳しい行事を乗り越えたお坊さんの胃と心を満たす茶粥

3
私達にとっては、珍しい“イベント”の一つである修二会ですが、実際に法要を行っている僧侶にとっては、非常に辛い修行の時。この法要の最中僧侶達は日中一食の精進料理以外、一切の食べ物も水も口にしません。身を切る寒さの中で厳しい法要が無事終わり、夜が明ける頃になって、やっと体をいたわる食べ物を口にすることができるのです。

この時食べるのが、奈良の名物料理でもある「茶粥」。茶粥はその名の通り、お茶でお米を炊いたもの。ただし、煎茶ではなくほうじ茶を使うのがポイントです。

そのルーツは古く、1200年以上前に大仏建立に従事した人々が、少ないお米を工夫して食べるために、お茶を入れた粥にしたという記録もあるといいます。京都などよりも早く、中国からお茶が伝わっていた奈良。喫茶の文化も早くから開花し、農家の生け垣などでも栽培が行われていたそう。人々の暮らしにずっと寄り添い続けてきた風土食なのですね。

4
今も趣のあるお茶屋さんが並ぶ

 

ほんの数十年前までは「奈良の朝は茶粥で明ける」というほど親しまれてきましたが、現在は食生活の変化によって、家庭で食べる頻度は少なくなっているそう。しかし、東大寺からほど近い「ならまち」周辺には、茶粥を食べさせてくれるお店や茶粥のセットを売るお茶屋さんなどが見られます。

香ばしい茶の香りと、程よく効いた塩気と滋味が身体の隅々にまで染み込むようです。お坊さんだけでなく、奈良を訪れた観光客の心も解いてくれる優しい味わい、ぜひ一度ご賞味あれ。

5
取材協力:奈良町 田村青芳園茶舗
http://www1.kcn.ne.jp/~seihouen/

まだまだ魅力がいっぱい!これから注目される!?奈良のFood

1200年以上の歴史をもつ修二会と茶粥。それ以外にも、奈良にはまだまだ知られていない「地域の食」がありました。東大寺門前にある、その名も「門前市場」。

ここで私たちが見つけたのは「大和野菜」。これは古くから奈良で食べられてきた地域野菜で、これまで限られた地域で作られ一般に流通することなく、消費されてきた野菜たちのこと。菜の花にも似た「大和まな」やゴボウのように細く赤い大根「片平あかね」、粘りの強い「大和芋」など、スーパーでは見られない野菜が数多く並んでいます。

6

門前市場の店長である杉本さんにお話を伺ったところ、こうした大和野菜は流通量こそまだ少ないものの、地元や関西の有名レストランでの取り扱いも増えてきているといいます。また、この店舗でも人気の野菜は早い時間に売り切れてしまうこともあり、まさに知る人ぞ知る特産品になっているそう。

東大寺門前市場
住所:奈良県奈良市春日野町16 夢風ひろば内
Tel: 0742-20-2071
営業時間:9:30~19:00(季節により変動あり)
http://www.yume-kaze.com/shop/monzenichiba.html

歴史の中で人々に根付いた料理と、新しい活躍の場を目指す伝統の食材。古の都から生み出すFood&風土の魅力、これからさらに注目が集まりそうです!

7

文責:つむぐarticles 鷲巣謙介
編集:アラカワ

関連記事

クロレラくらぶ公式Instagram
旅するFood記公式Instagram