甘やかされて美味しくなる!?執念の茶「玉露」の故郷、京田辺へ。

2016.5.25

コンビニエンスストアのペットボトルにも並ぶ新茶の文字。その中に、「玉露入り」の文字を見つけたことはありませんか?お茶の中でも高級と言われる玉露。でも、それってどんなもの?

日本茶と言われれば想像はつくけれど、玉露の味って?そんな疑問を解決するため、生産現場へ突撃!旅するFood記始まって以来の、常識を覆す「とんでもないお茶」に遭遇しました。

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お茶のスペシャリストに会いに行こう。

京都府の南部、大阪や奈良に隣接する京田辺市。

ここは茶所京都の中でも玉露の産地として名高く、日本一優れた品質のお茶を決定する全国茶品評会で産地賞、農林水産大臣賞などを幾たびも受賞しています。

しかし、「玉露」とはどういったお茶なんでしょうか。

名前はもちろん知っているし、“お茶の中でも高級品”という印象ではあるものの、玉露とは何かを語れる人は、意外と少ないはず。実は私もその一人です。そこでまず、勉強を兼ねてお茶のスペシャリストにお会いすることに。訪ねたのは、京田辺市役所農政課。京田辺茶の振興、ブランディング等を手がける主事の渡邊さんにお話を聞くことができました。

京田辺玉露は「お姫様を育てるよう」に栽培されている。

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スペシャリストの渡邊さんにお話を伺うと、「玉露は日本茶・緑茶の一種であるものの、一般的な煎茶とは製法や栽培法が違う」のだそう。曰く、玉露は「徹底的に手間暇をかけて育てる」お茶であるといいます。

「栽培時には、収穫前最低20日以上、二重の日覆いをかけて日光を遮ります。これは茶の樹は日光に当てるとカテキンが葉に生じ、苦味が出るからなんです。反対に日に当てずに育てると、うま味成分のテアニンが茶葉に凝縮されます。」
玉露は口に含むと甘みだけでなく、アミノ酸の強い味を感じますが、これはテアニン(旨味成分)によるもの。

「京田辺の茶農家さんは年1度の収穫のために、一年をかけて茶園を管理し、肥料もたっぷりと与え、虫や霜、冷気にさらされないよう細心の注意を払って育てるのです。こうして育った茶の樹はとてもか弱いもの。一度虫が発生すれば茶園全体の樹の生育が止まってしまうほどなんです。本当にお姫様を育てるようなんですよ。」

蝶よ花よと育てられた茶の樹、しかも、京田辺玉露の収獲方法は全てが手摘み、茎や成長しきった葉を含めず、芽吹いたばかりの若葉のみを人の手で摘み取っていくというのですから、その手間は気が遠くなるほど。さらに摘み取った茶葉は蒸し、揉んで乾燥させる製茶工程で重量がわずか6分の1となります。

話を聞くうちに、思い浮かぶのはグラン・クリュ(特級畑)のワイン作りやマツタケの栽培などにも通じる、美味しいものを作るための執念とも言えるこだわり。

それを裏付けるように、京田辺の手摘み玉露には、過去に最高(卸)価格で1kg 57万円!の値がついたそう。確かに驚きの価格ですが、京田辺玉露の生産は年間わずか1~2トンが限度。その背景にある作り手の苦労を考えれば納得です…。

市役所でお茶を・・・

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「京田辺玉露を飲んでみましょうか」と、渡邊さん。市役所の一室で、手ずからお茶を入れてくれました。

玉露は、宝瓶急須と呼ばれる茶器を使い、低温で淹れることで苦味や雑味のない味を引き出すのが一般的(混じりけのない、京田辺産の玉露であれば、熱湯でも美味しく淹れられるそう)。煎茶であれば70~80度のお湯を使いますが、玉露の場合は40度以下、水出しにすることもあります。

市役所の一室に専用茶器があるというのも、産地ならではですね。

さて、とうとう念願の京田辺玉露との対面。小ぶりの茶碗に入れていただいたそれは、少し乳白で薄緑と黄金色の間というような、澄んだ淡い色をしています。口に含むと感じるのは、出汁かと思うような力強いうま味。煎茶のほろ苦さや青い香りを想像しながら飲むと、面食らうほどの味のギャップです。

玉露は日本のエナジードリンク!?

「玉露のうま味は、先ほども言ったテアニン、さらにアルギニンなどによるものです。さらに、ビタミンやミネラル、カフェインなども含まれます」。なにやら、聞き覚えのある栄養素が紹介されました。アルギニンにカフェイン、アミノ酸群。エナジードリンクやスポーツドリンクで聞く、栄養素です。

「昔は、大工さんなど肉体労働者の方が、好んで玉露を飲まれていました。体を動かしたあとにアミノ酸を取ると疲労回復の効果もあり格別美味しく感じますから。それこそ、私たちにとって“ここぞ”という時のエナジードリンクのように、昔の人も高価な玉露で栄養補給をしていたのかもしれません。また、玉露にはリラックス効果もあり、お客様に対してお出しすることもあります。お話をする際に相手をいたわりつつ、話し疲れないよう口を湿らせるといった役割だったそうです。うま味が強い玉露は、煎茶や番茶のようにゴクゴクと飲めるものではありませんから、そういったお茶の性格や背景を踏まえて味わっていただくと、お茶の魅力がもっとよくわかるのではないでしょうか」。

「この話は、京田辺市の老舗茶問屋※1 の店主であり日本茶鑑定士十段位※2 の小林裕氏に教わった話で、その成分にスポットを当てた商品も販売中なんですよ。」

※1 店舗情報
祥玉園製茶(株)
京田辺市草内宮ノ後54番地
TEL:0774 (62) 0136
http://www.shogyokuen.co.jp/history/index.html

※2 最高位の保持者は国内で13名、京都・宇治茶業界で唯一

お話に引き込まれているうちに、気づけば私たちの前には二煎目の入った茶碗が並んでいます。このお気遣い、恐縮しつつも、なんとも嬉しくなります。

一煎目より少し高い温度で入れられた二煎目は、先ほどとはガラリと風味が変わり、うま味とともに、爽やかな香りと柔らかく口当たりの良い甘さが舌の奥に広がります。確かにこの変化は、話の合間にほっと一息つくのにもってこい。玉露の奥深さに少し触れられたような気がします。

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お茶休憩で、エネルギー補給

いざ、茶畑へ。

お茶についてお話を伺った後は、京田辺市飯岡の茶農家さんの元へ。5月に最盛期を迎える茶摘みの風景を探しに出かけます。茶畑と聞くと、かまぼこ型に揃えられた低い茶の樹が連なる景色を想像しがちですが、私たちが現地で目にしたのは、説明にあった通りの黒い日覆いのかけられた畑。覆いの中に入ると茶の樹は、なんと人の背丈ほどで、茶摘み子と呼ばれる農家の奥さん方が、盛んに枝から若葉を手摘みしています。実はこれこそが、手摘みの玉露園の本来の姿で、「自然仕立て」と呼ばれる茶園の風景。私たちが思い描いていたかまぼこ型の茶畑は、機械によって切りそろえられたものだったのです。

茶畑の覆いの隙間からは、木津川の流れを望む遠景が広がります。古墳が多く丘陵地帯でもある飯岡地区は、日当たりのよく温暖な気候で茶作りには最適。長く続く坂道と、うららかな日差し。昨年、日本遺産にも認定されたという飯岡地区には、なんとものどかで、風情のある景観が広がっています。

さみどり(左)、とうじひかり(右)

 

畑から望む木津川

 

収穫風景を見ていると気になることが。茶葉の形や色が木によって違うのです。

普段は気にしていませんが、茶の樹も他の作物と同様に品種があるそう。この時見せていただいたのは、「さみどり」「うじひかり」といった種類。品種独特の個性の強いもの、香りの高いもの、味の良いものなど特徴があり、これらをブレンドして味・香りを調合していくのが茶問屋さんの仕事だといいます。

摘みたての茶葉をいただいてみると、この段階から既に、香りと深いコクがあるのに驚かされます。

京田辺のお茶を味わうなら…

せっかく玉露の産地に来たのだから、お茶を購入して自分でも味わってみたい!でも、普段スーパーなど以外でお茶を購入する経験はなかなかないものです。

お茶の種類はどうやって選べば良いのか、どのくらいの価格帯のものが良いのか、いざお茶を買うとなると、わからないことが多いのに気がつきます。

そこでご案内していただいたのが、普賢寺の「西村幸太郎商店」さん。店内には、煎茶や玉露、抹茶などがズラリ。100g 1,000円代のリーズナブルなお茶から、ちょっと値の張るものまで豊富にラインアップされています。

もちろん京田辺玉露も販売されていますよ。

「お茶を購入される際は、店頭ディスプレイされているものを選ぶのもいいですが、賢い買い方はお店の方に予算や用途、好きな味わいを伝えて選んでもらう方法。お茶について詳しく聞きたい時は、京田辺市役所の農政課などでも、京田辺自慢のお茶屋さんをご案内していますよ」と渡邊さんからのアドバイス。

お茶を大切に扱う店舗であれば、注文後に抹茶を挽いたり、茶筒に茶葉を入れて提供してくれるので、新鮮なお茶を購入できるそう(あらかじめパッキングされ、手軽に買えるお茶もあります)。西村幸太郎商店さんでも、注文してからお店の奥で、茶筒に茶葉を入れ丁寧に商品を作ってくださいました。

店舗情報
西村幸太郎商店
京都府京田辺市普賢寺打垣内17
TEL:0774(62)0167
http://www.tea-nishimura.co.jp/

最近お茶、淹れましたか?

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現在日本国内では、緑茶の消費量は年々低下傾向にあり、特に高級価格帯のお茶や急須で飲むリーフ茶の需要は減り続けているといいます。また、京田辺でも玉露を育てる若手の農家が少なく、後継者問題を抱えているそう。

仕事の合間やお出かけ先で、コーヒーや紅茶を飲みながら一息つくのもいいですが、たまにはお茶を楽しんでみませんか?

ブラジルやコロンビアの奥地で栽培された香り高いコーヒー、英国で長年愛され続けた紅茶、花の香りを移した中国茶、素敵な背景をもつ海外のお茶に負けないくらい、日本のお茶にも生産者さんの物語や歴史があるのです。

今までペットボトルのお茶ばかり飲んでいるという方であれば、近くのお茶屋さんへ出掛けるだけでも、そのお茶の種類に驚くはず。店員さんに聞けば、必ずお茶の選び方や淹れ方を説明してくれるので、怖がらなくても大丈夫。煎茶のもつ苦味や爽やかな香り、玉露の鮮烈な旨味と甘みといった魅力を知れば、日本のお茶文化の底力にきっと引き込まれますよ!


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取材協力:京都府京田辺市経済環境部農政課主事 渡邊 博文様
※第31回京都府緑茶審査技術大会 優勝


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文責:つむぐarticles 鷲巣謙介
編集:サンダイジ & アラカワ

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