京都の銭湯に集え!

2016.7.7

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銭湯。

400円そこそこで、広々としたお湯に浸かれて、サウナに入って、ゆったりくつろげて、お湯から出たらすぐに冷えた牛乳やビールがあって・・・。

まさに町のオアシス、それが銭湯。でも、それは私を含めたごく一部の話であって、やっぱり利用者には高齢の方が多いし、内風呂の普及による利用者の減少から、銭湯はどんどん廃業しているのが現実。「あぁ、懐かしく消えゆく昭和のノスタルジー…」。
しかし、京都の銭湯は近年大きく注目され、地域の若者はもちろん、観光客や外国の人々にも銭湯マニアが浸透し始めているとか。

一体、京都の銭湯になにが起こっているのか、確かめに出発です。

銭湯に集え、銭湯で楽しめ!銭湯イベントの草分けが仕掛ける、新たな文化。

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手始めにやってきたのは京の台所、錦市場。市場の中程、堺町通を少し下がった所にあるのが「錦湯」です。

簾や暖簾が翻る建物は昭和初期のもの。その重厚で風格ある佇まいに、思わずシャッターを切る観光客の姿がみられます。引き戸を引いて入ると、やはり時代のついた番台、格子状の天井(格天)と、これまた趣たっぷりの内装が目に入ってきます。特に注目したいのは、ロッカーに並ぶ年季の入った柳行李(やなぎごおり)。そこに書かれているのは、常連さんの名前なのだとか。見れば錦市場にある老舗の屋号もちらほらと。

脱衣カゴとして、使われるこの行李は、現在生産者がほとんどいないため非常に希少。錦湯では店主が自ら手を尽くして探し、さらに知り合いの提灯やさんに名入れをしてもらうという念の入れよう。これはすなわち、常連さんの勲章。
ただし、名前ではなく数字の書いてある行李は、だれでも使えるのでご安心を。

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ただしこれだけでは、風格あるレトロな銭湯。

素敵な場所ですが、若者を集める魅力となると疑問が残ります。しかし、脱衣所や湯場をみて回るうちに、徐々にその疑問は解けていきます。ふと耳をすませば脱衣所にゆるく流れているのは、なんとジャズ。浴場の入り口にあるのは、招き猫のステッカー。よくよく見れば、脱衣所のあちこちに、落語やライブのポスター、中にはなぜか銭湯でニシキヘビを首に巻いた人の写真も・・・。

実はこの錦湯の店主さん、銭湯を使ったイベントを10年以上にわたって開催し続けている、銭湯イベントの草分け的存在。

「湯殿のリバーブ(残響)を使って音を鳴らしたら面白いんちゃうか」という思いつきから開催されたジャズのライブに始まり、寄席や剣劇、アートイベント、時には著名なアーティストとのコラボレーションも行っているというから驚き!先ほどのニシキヘビの写真も、「ニシキヘビ」と「錦湯」をかけたイベントなのだそう。とにかく、「面白いことなら、すぐ動いて実現させる」という店主の言葉通り銭湯の枠を離れた、破天荒なイベントを開催し続けているんです。

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「昔は銭湯って社交の場やったんやね。子供も大人も年寄りも、一緒に裸になって話聞いたり、社会のルールを教わったりな。銭湯のそんなコミュニティにもっぺん目を向けられるようなことがしたくてな」。少し熱めのお湯と、エネルギッシュな店主さんが仕掛けるバラエティ豊かなイベントの数々。エンターテイメントとリラックスの空間の魔力に引き込まれて、20~30代のお客さんや、外国からのこの銭湯を訪ねてくる人も増えているとか。

そんな、浴場の入り口や、湯口の周りに、ある時イベントを行った外国人の方が落書きをして行ったそう。

「 YOU ARE IN HEAVEN」。

その気持ち、大いにわかります。

錦湯
住所 京都市中京区堺町通錦小路下る八百屋町535
TEL 075-221-6479
営業時間 16:00〜24:00 月曜定休

100年を超えて、愛され続ける町のお風呂。 …が、銭湯のイメージを覆す進化??

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銭湯といって思い出すのは、富士山に白砂青松のタイル絵。でも、そんなイメージを覆す銭湯が、京都円町にあるとか。
やってきたのは「松葉湯」。なんと100年以上も営業を続けている、京都でも老舗の銭湯。

それのどこに、イメージを覆す部分が?

そう思いつつ、番台を抜け浴室に入っていくと、目に留まったのは、天井ちかくのタイル絵、そこに描かれているのは、山は山でもマッターホルン。店主さんが旅行で訪れたアルプスの山々があまりに美しかったので、タイル画の職人に「アルプスなんてどうだろう」と何気なく言った言葉が実現したという遊び心溢れるもの。よくよく見ればランプや蔦の這わされた仕切り壁なども、西洋風のデザイン。浴場の奥の中庭には、数多くのインコが飛んでいるし、なるほど、普段は見られない光景です…。

ん?……インコ?

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確かに、インコが飛んでいます。

浴場の奥にあるガラスで仕切られた中庭(※)のその中に。

セキセイインコやボタンインコ、コザクラインコにジュウシマツといった鳥たちは総勢60羽。その足元にはリクガメの亀太郎くんものんびりと暮らしています。なんでも、もともと観葉植物を置いていた中庭に、飼っていたインコを放したところ、そこが気に入って戻ってこなくなったのが始まりなんだとか。そのうち、インコがついばんだ観葉植物はみな枯れてしまったものの、さえずりなからコミカルに動き回る鳥たちの姿は、地域のこども達に大好評。

さらに、町の人々が引越しなどで飼えなくなった鳥たちを預けていった結果がこの不思議な光景を作ったのだと言います。

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そんな「インコを眺める銭湯」誕生の謂れを話す店主の声はとても嬉しそう。

その理由は、インコの住む中庭を見れば明らかです。インコの大きさ、性格に合わせて、仕切りや巣箱が作られているだけでなく、中庭はとても清潔に保たれています。毎日、浴場も庭も徹底的に、念入りに掃除するという店主さん。銭湯も、お客さんも、鳥たちにも愛情を注いでいるんですね。
※中庭と浴場は、ガラスで完全に仕切られているため、衛生面での問題は一切ありません。

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インコのインパクトが強い松葉湯ですが、薬湯や電気風呂、サウナに水風呂とお湯の種類も実に豊富。薪で炊き上げるお湯は、肌に優しく柔らかいのが特長です。お客さんも、お湯も、鳥も全てを大切にしている松葉湯。地域のお客さんもそれに応えるように、元気に飛び回るインコを眺めながら、のんびりとお湯に浸かっています。あなたも、ぜひその輪の中に入ってみては?

松葉湯
住所 京都府京都市上京区下立売通御前通東入西東町356
TEL: 075-841-4696
営業時間 15:00~24:00 日曜定休

銭湯で駄菓子?銭湯のカタチを目指す若手のこれからに期待!

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銭湯の経営者といえば、どうしても中高年の方を想像しがち。でも、京都の銭湯には今、20代〜30代の担い手が増えてきているそう。

その若手の一人がいるのが、大将軍の源湯。

風呂の種類は、ジェット風呂にスチームサウナ、電気風呂に薬湯と豊富。浴槽のタイルには泳ぐ鯉のタイル画が描かれていたり、奥壁は細かなタイルをモザイクのように散りばめた湖畔の風景となかなか芸術的なしつらいの銭湯です。脱衣所には、デジタルとは無縁の体重計に、10円をいれるマッサージチェア、現店主の作った彫刻作品やオブジェが並ぶ様子は、いわゆる「古き良き銭湯」の風景…。

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若手のこだわりはどこに・・・?

と探してみると、ありました、ありました。なにやら面白いものを発見!

ゲームやアニメのキャラクターが描かれた駄菓子のビンに、風呂上りの飲み物には、ビールはもちろん、カクテル風のアルコール飲料にご当地ジュース。「銭湯民族」(!?)と書かれた、エッジの効いた源湯のオリジナルステッカーの販売なども行われています。

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このイラストや商品のチョイスは、26歳の源湯の二代目によるものだそう。この二代目、「僕は、結婚して京都に来るまで銭湯にあまり入ったことがありませんでした。」と語る異色の経歴の持ち主。それでも、湯上りに牛乳だけでなく、お酒やジュースの種類を増やし、おつまみになりそうなスナックや駄菓子を置くセンス、なかなか銭湯好きの心をくすぐるものがあります。脱衣所の真ん中には大きな縁台があり、ここに座って、よりどりの好きなドリンクとおつまみを片手に過ごす時間、考えただけで至福のひと時です。

また、話を聞いていると他の若手が経営する銭湯と連携してイベントなども考えているそう。「僕の他にも、京都には若手で銭湯を経営している人がいて、イベントを一緒に開催したりもしているんです。僕も、自分の好きなこと、できることで、新しい取り組みをしていきたいですね。負けられません」。と意欲的な話を聞かせてくれました。

ノスタルジーも新しいイベントも!魅力いっぱいに変わる、京都の銭湯の魅力!

心のどこかでは、銭湯というと「古いもの」「古さを楽しむもの」と思っていました。しかし、今回発見したのは、新しくイベントを起こしたり、地域の人々と一緒に歩んだりといった、現在進行形で生まれ続ける「新しい楽しさ」でした。老舗も、若手も、アイデアマンの仕掛け人も、それぞれに自分たちの面白いと思う姿を模索し、提案し続ける京都の銭湯。

「京都観光ってちょっと退屈、お寺や神社巡り以外の魅力が知りたい!」

そう思ったら、京都の銭湯へ!たった430円であなたの知らない楽しみが見つけられるかもしれませんよ!

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源湯の番台に掲げられた看板。この素朴さ、素敵すぎる。

源湯
住所 京都府京都市上京区御前西裏上の下立売上北町580-6
TEL: 075-461-2322
営業時間 14:00〜25:00 不定休

銭湯と言えば牛乳?いいえ、関西ではこれが定番。

牛乳か、コーヒー牛乳か、それともフルーツ牛乳か。いやいやビールは外せない…。議論が絶えない湯上りの一杯。関西ではその一角に、「ひやしあめ」が食い込んでくるんです。関東ではほとんど見かけませんが、関西〜広島にかけては、銭湯はもちろん、海水浴場、夏祭りには欠かせない飲み物。

ひやしあめは、麦芽糖に生姜を加えたもの。甘くトロリとした香りに、生姜の刺激が効いて、湯気でぼーっと火照った体と頭が一気に目覚めてくれます。

お酒好きは、これを日本酒や焼酎で割って飲むのだとか。

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地元を離れて、知らない町で入る銭湯。それなら、その土地の飲み物にもこだわってみては?京都の銭湯巡りの際は、いつもの牛乳&ビールではなく、ひやしあめ。一度お試しを。

文責:つむぐarticles 鷲巣謙介
編集:食品栄養科学博士 フジシマ

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